症状と病態が違う
先日も経験したのですが、
漢方相談でお客様の主訴と病態が一致しないことがよくあります。
主訴は、吐き気が良くある、食欲がない、頭痛が頻繁にする、食が細い、固形物が苦手などである。
最初「これは脾胃に問題があるな」と判断し、胃腸の働きを改善する漢方薬を処方しました。
六君子湯や平胃散、小半夏湯半夏厚朴湯などを試しましたが、呉茱萸湯が比較的主訴を軽くする程度で
どの処方も「これだ!」という効き方をしません。
さて困った。このままでは漢方専門の名が廃ります。何とかせねば。
こういう時は胃腸には問題がなく、別の大きな理由が必ずあるはず。
漢方では、内臓には相互に影響しあう関係性があると考えます。
ある内臓の働きがほかの内臓の働きを抑制してしまう相克関係、
この場合は木克土(もっこくど)という関係性ではないかと考えた次第。
ちなみに木克土とは、木とは肝臓、土とは胃腸、特に胃のことで、
木が土の働きを抑制する、具体的には上記のような症状を呈してしまいます。
木(肝臓)はストレスの受け皿であり、外界からの刺激を一旦全て受け入れる内臓。
ストレスが募ると肝臓の働きが過剰になり、結果胃の働きを抑制してしまうのです。
身近なところでは、酷く叱責されると食欲が無くなりますが、これが続いてしまう状態といえば判りやすいでしょうか。
このお客様はこの考え方で肝臓の働きを緩やかにする漢方薬を処方したところ、
吐き気、食欲不振、頭痛といった症状が目に見えて消退し始めました。
このお客様、仕事なのか家庭なのか、人間関係なのか何なのか理由は判りませんが、
強いストレスに長く晒されているのは間違いなさそうです。
肝臓の働きを穏やかにする漢方薬のことを「美味しく服用しています」とおっしゃているので、
結構正解に近い漢方薬をご用意できたものと思います。